1998 In Chicago BLUES IS ALRIGHT

chicago photo  帰国するジェット機の機内は今映画を上映中。閉めきった小さな窓の向こうは青空の天空。数時間前、シカゴを飛び立った時は雨模様だったのに、雲の上は嘘のような日本晴れ、いやアメリカ晴れ、いやいや地球晴れ。あー、雲の上ってのはいつでもこんな青空なのだろうか?........。 5年ぶりのシカゴ滞在を終えて、もう2時間もすれば成田へ到着する。気流が良いせいか、今は静かな飛行中。大の苦手の飛行機なんぞにまたしてもおもいきって飛び乗っての“ブルースの旅”。さてその収穫やいかに.....。

 日本でいえばさしずめ東京は銀座のめぬき通りのビルディングや道路を100倍、1000倍ぐらいスケール・アップしたかのようなイメージのシカゴの中心街。その街並を、前回の旅からの友人、コーディネーター遠藤君の運転するレンタカーで走りに走りめぐった。ビデオの林渉君、カメラの今井君のレンズに収まりながら、想像してたよりだいぶ肌寒いシカゴの街を昼夜にわたって......。
15周年という“シカゴ・ブルース・フェスティバル”を観るのもメインの目的の1つってわけで、それは街中の大きな大きな公園で開催されていた。なんとシカゴ市がすべて入場無料で提供するというすんばらしい歴史あるイヴェントだ。ある程度予想していたが、全体像としては観光としてのブルース祭りの域を感じつつも、よく晴れたおだやかな昼下がり、小さなサブ・ステージに現われた、R・J・ロックウッド氏、その人を目の前にし、おなじみグレッチ12弦のつま弾きを耳にすれば、遥かなミシシッピー・デルタの香りを胸いっぱいに吸い込むのでありました。
予想外の寒さのため、当所の予定よりずいぶん見れなかったものもあったが、うわさに聞く“シカゴ・ブルース・フェス”を肌で感じられたことは貴重なる体験でありました。
うん、なんつったって、ブルースが産業だなんてやっぱりシ・カ・ゴだぁ。

 別のある日。
 初期ストーンズの楽曲のタイトルともなったアドレスにある、あの黄金のサウンドの発祥地、チェス・レコードへと。今や記念館となったそのビルの階段を昇り降り、うす汚れた壁にそっと手をやれば、M・ウォーターズやW・ディクソン達がドア越しにひょっこり現われもしそうなスペシャルな気配。スタジオがあった部屋へと足を踏み入れれば、こんな小さな部屋の、こんな素朴なマシーン(部分的ではあるが録音機材が残されていた)から、あんなとてつもないDeepなサウンドを生み出したなんて..........ムー、ムー、ムー。そのマジックとはいったい? ムー、ムー、ムー。
(仲井戸語録を1つ“工夫は創作の母である”.....なのかなあ....。)それにしても、偉大なチェス・レコードの歴史の香りを吸い込むほどにシカゴ・ブルースの重鎮、W・ディクソンの存在の大きさを痛感したのでありました.....。

 別のある日。
 仁王立ちするかのごとくそびえ立つ大高層ビルを背中にしょって、林渉君のレンズに向かう夕暮れ。信号待ちするドライバー達の目など何故だか気にもならない。手に入れたばかりのフェンダー・フルアコをかき鳴らせば、旅人である事さえ、つかの間忘れてしまうかのよう.......。
走って歩いて走ったシカゴの街。今やどんなブルース・マン達よりはるかにその名を売りまくるこの街のヒーロー、マイケル・ジョーダン。
その巨大な看板と何度も目を合わせながら、心はブルースを追いかける、追いかける、追いかける......。いつの間にか気がつけば車はディープきわまりないサウス地区の一画へと。若き日にいく度となくレコード・ジャケットや写真集などで目にした、そのものズバリ!の風景は、遥かなる場所へと足を踏み入れてるってな、個人的な想いを静かに、しかし確かに呼び起こす。人気のない住宅街に無造作に乗り捨てられてるかのようなおんぼろキャデラックのボンネットに腰かけ今井君のカメラに収まれば、yeh! 気分ばかりは揺ぎもしないブルース・マン! yeh! yeh!
路地裏のちんぴらに何やらイチャモンつけられるの図も、ムー、シカゴしてるじゃん......ってなもんなのでありました。yeh! yeh!

 一日、一日のスケジュールのしめくくりは少しばかり疲れた身体をひきずって、それでも連日連夜クラブからクラブへと。バディ・ガイ・リジェントである夜観た、もとM・ウォーターズ・バンド、もとM・スリム・バンドなどでのプレイのキャリアをもつ、J・Primerのシカゴ・ブルースの真髄に大感激。この夜のたかだか2時間余りのひとときが、まさに今回のプライベートなハイライト中のハイライト! 来てよかった、来てよかった、おもいきって来てよかった、飛行機がまんしてよかった....のハイライト! とんでもない観光ブルースもいくつか観た。
それはそれであるからして、良し悪しの基準はない。それでもこちらもなめられるほど、やわなブルース・ファンでもない。好き嫌いの基準ははっきりしている。そしてまさかブルースがすべてでもなんでもありゃしない。想えば、きっと自分の音とことばこそを探しあてるってな旅に出て来たのであるから............。
はて、さて、あれは何日目だろうか?少し雨降り模様のシカゴの街。スタッフが用事を済ませてる午後の待ち時間。ガード・レールに腰かけて、一服、二服すれば、行き交う人達、たたずむ街並、“Sky is crying”な空、それらすべてが何か不思議な物語りの中の出来事の中のような錯覚が......。それはブルースという形のないとてつもなくDeepな代物を探しにちょっと旅に出た、どこの誰かのはじけるような物語のような..........。

 そして最終日。
 レイド・バックにゆるやかな午後のひととき。シカゴ大学の巨大なキャンパスの一画のベンチに腰をおろして陽を浴びる。
ふと、向かいの校舎からいつかの遠い日、若きM・ブルームフィールドが授業をぬけ出して、ギターを抱かえ、どこぞのブルース・クラブへと走って行く......そんなイメージさえ見れたような.......。
シカゴ大学の敷地拡大工事のため、ブルースの名所、多くの歴史を刻んできた“マックスウェル・ストリート”(前回はまだ存在していて訪れた)が消えていくらしい.....なんてことは後日知った。ムー、シカゴ........
時と共に移り変わる........
か...............。
But BLUES NEVER DIE!
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