これは、現代の源氏物語絵巻である。光があり、闇があり、過ぎ行く影のなまめかしさもある。モノクロームの印画紙に籠められた一千年後の王朝世界を、どうかあなたも愛してほしい。   橋本治
<写真集帯より>

不思議なグラビア。源氏物語の各シーンに沿って、幻想的な写真が続いていく。橋本の印象深い短文と、おおくぼがイメージを羽ばたかせたビジュアルが意表をつく。「桐壷」は、マネキンを背後に座り込んだ裸体の子ども。バスタブからハイヒールをはいた女性の足がのぞいている図が、「葵」だったりする。意味を深読みするのではなく、ふたりの創作者の出会いを直感的に感じて楽しむ写真集だろう。

『朝日新聞』'93年4月11日より